薬物療法

薬物療法

2型糖尿病では、生活習慣の改善で血糖コントロールが十分えられない場合に飲み薬や注射薬を用います。1型糖尿病では発症時からインスリン療法が必須となります。

A.経口血糖降下薬(飲み薬)
さまざまな種類があり、患者さんの状態に合わせて1剤、もしくは2剤以上を併用します。注射薬と併用することもあります。

①すい臓に働く薬
1) スルホニル尿素薬(SU薬)
すい臓を刺激してインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させます。空腹時に低血糖を起こすことがあるので、患者さんごとに投与量を調節して処方します。

2)速効性インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
SU薬と同じようにインスリン分泌を促進しますが、作用が速く短いという特徴があります。1日3回、食事の直前(5~10分以内)に服用する事で食後の血糖上昇を抑えます。食事量が少ない時に服用した場合に食後に低血糖が起こることがあります。

3)DPP-4阻害薬
小腸から分泌されるインクレチンという消化管ホルモンの濃度を高め、すい臓からのインスリン分泌を促進して血糖値を下げます。血糖値を上昇させるグルカゴンを抑制する効果もあります。効果はマイルドで副作用が少なく、日本では多くの患者さんに使用されています。

②肝臓に働く薬
ビグアナイド薬
肝臓からの糖の放出を抑えて血糖値を低下させます。歴史の古い薬で長期服用についての安全性が高く、安価なため、海外ではもっとも多く使用されています。下痢や胃痛などの消化器症状が起きる場合があるので、服用を開始するときは少量から始めます。

③脂肪細胞に働く薬
チアゾリジン薬
脂肪細胞へ作用し、インスリン抵抗性を改善する事で血糖値を下げます。血糖値を長期に安定させる作用に優れますが、体重が増えやすい事が難点で、食事・運動療法が欠かせない薬です。

④消化管に働く薬
アルファ・グルコシダーゼ阻害薬(αGI薬)
食前に服用する事で炭水化物の分解・吸収を遅らせ、食後の高血糖を抑えます。作用はマイルドですが、放屁・下痢・便秘などの副作用があるので、服用を開始するときは少量から始めます。食事療法と併用すると減量効果も期待できます。

⑤腎臓に働く薬
SGLT2阻害薬
尿中へ排出するブドウ糖の量を増やし、体内のブドウ糖が減るために血糖値が下がります。減量効果・血圧下降・脂質改善・臓器保護・合併症抑制効果なども期待されている注目の薬です。利尿作用があるので、服用する場合には医師の指示を守る事が大切なお薬です。


B.注射薬
①インスリン注射薬
インスリンを直接注射して血糖値を下げるホルモン補充療法です。1型糖尿病患者さんには毎日数回の自己注射が不可欠です。1型糖尿病患者さんに対しては、インスリンを自動注入する携帯型のポンプ療法も徐々に普及してきています。
2型糖尿病患者さんにおいても、経口薬で目標が達成できない場合や、血糖値が非常に高い場合に用いられます。インスリン製剤には様々な種類があり、投与量のこまめな調節が必要なため、血糖自己測定(保険適応)も合わせて行います。

②GLP-1受容体作動薬
小腸から分泌されるGLP-1という消化管ホルモンと同じ働きをする注射薬で、主に食後の血糖値を下げます。食欲を抑えて体重を減らす効果も期待されます。血糖自己測定(保険適応)は必須ではありませんが、医師の判断でお勧めする事もあります。


当院では、薬物治療の説明に力を入れており、特に自己注射では、正しい注射手技・低血糖時の対処法など、安全に治療を続けていただくための指導をいたします。